夏風邪とは?症状や原因、
対処法や予防法も解説
Understanding Summer Colds - Symptoms and Treatments

- 監修:内田直樹(うちだなおき)先生
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昭和医科大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門 教授
昭和大学(現:昭和医科大学)卒。
2014年4月より現職
日本臨床薬理学会 指導医・専門医
6~8月に流行する「夏風邪」。冬場の風邪やインフルエンザとは異なる原因ウイルスによって引き起こされるもので、症状にもいくつかの特徴があります。夏風邪の症状や原因、正しい対処法、予防法をご紹介します。
夏風邪とは?
夏風邪とは、夏場にかかるウイルス感染症の総称です。夏風邪を引き起こす原因ウイルスは、感染力が強い傾向があります。
夏風邪の特徴は、発熱やのどの痛みなどの風邪症状に加え、手足や口内の発疹などの「皮膚症状」や結膜炎などの「目の症状」、吐き気・腹痛・下痢などの「胃腸症状」を引き起こすことです。
夏風邪のウイルスは高温多湿の環境を好み、6月頃から増え始め、7月に夏風邪の流行ピークを迎えます。
夏の3大感染症とは
夏風邪はいくつかの種類の感染症が存在します。なかでも、次の3つが夏風邪としてよくみられるもので、夏の3大感染症とも言われています。
- ・咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)(プール熱)
- ・ヘルパンギーナ
- ・手足口病
咽頭結膜熱(プール熱)の症状の特徴は発熱(38~39度)、のどの痛みに加え、目の白い部分が赤くなる結膜炎がみられることです。潜伏期間はおよそ5~7日で、発症から4~5日間は1日の体温が高熱と微熱との間を行ったりきたりする特徴があり、治るまでに比較的時間がかかります。
ヘルパンギーナと手足口病は、どちらもエンテロウイルス属に属するウイルスが原因で、口内に水ぶくれができるのも特徴の1つです。また、ウイルスが腸管内で増殖することによって胃腸炎の症状を引き起こすことがあり、夏場に「おなかの風邪」と言われるのはこれらの胃腸症状のことです。
夏風邪は子どもだけでなく、大人もかかる
夏風邪は小さい子どもがかかりやすいものですが、大人もかかることがあります。近年では、大人の発症例が増えています。大人が夏風邪にかかった場合は、子どもに比べて重症化するリスクが高いと言われています。特に小さい子どもと接する機会の多い方や、子どもがいるご家庭の方は、感染機会も多いため注意が必要です。
夏風邪の原因
夏風邪はウイルスへの感染が原因で起こるものです。くしゃみや鼻水などの飛沫や、タオルの共用などによる接触を通して、ウイルスが体内に侵入すると体は免疫反応として発熱し、ウイルスと戦います。発熱は免疫細胞が活発に働くための自然な反応であり、通常40℃を超えることはありませんが、発熱の影響によってだるさや頭痛などの症状が数日続きます。
また、夏場の免疫力の低下も、夏風邪の原因の1つです。特に夏場は疲労や睡眠不足、食欲低下などが重なり、免疫力が低下しやすい季節です。ほかにも、エアコンの影響による冷えも免疫力の低下につながります。免疫力が低下すると、夏風邪に感染しやすくなり、回復にも時間がかかるようになります。
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熱中症との違い
夏風邪と熱中症はどちらも夏場に起こりやすく、発熱やだるさ、頭痛など症状が似ているものがあります。ただし、発症メカニズムはまったく異なります。
熱中症は、高温多湿な環境下で体温調節機能がうまく働かなくなることで起こります。通常、私たちの体は暑くなると汗をかくことで熱を放出しますが、熱中症になると体内の水分が不足し、次第に汗をかけなくなります。その結果、体に熱がこもり、体温が上昇します。重度の熱中症では、40℃を超える発熱や頭痛、めまい、吐き気、意識障害などの症状があらわれます。
夏風邪と熱中症は、発熱やだるさなどの症状が似ているため、見分けが難しい場合があります。熱中症は重症化すると命に関わるため、注意が必要です。高温環境下で体調が悪くなった場合は熱中症を疑い、塩分を含む水分(※)を補給し、体を冷却するなど早期に処置を行う必要があります。
- ※「塩分を含む水分」とは、ナトリウム濃度として40~80㎎/100Ml、食塩相当量として 0.1~0.2g/100MLを含むスポーツドリンクなどのこと
夏風邪の対処法
医療機関への受診の目安とセルフケア
「夏風邪かな」と思ったら外出を控え、まずは自宅で療養しましょう。夏風邪の初期段階では、軽症の段階で早期に受診しても、夏風邪の種類を鑑別できないことが少なくありません。
もし高熱が続いてつらい場合、息苦しさ(呼吸困難)や強いだるさ(倦怠感)などの全身症状があるなど、重症化が疑われる場合には、医療機関を受診するようにしましょう。持病をお持ちの方、高齢者、肥満、妊娠中の方など、重症化しやすい方は、軽い風邪症状でもすぐにかかりつけ医に相談してください。
夏場は多くの汗をかくため、塩分を含む水分をこまめに補給し、脱水症状を防ぐことが大切です。消化の良いものを食べ、安静にして過ごしましょう。
自宅療養時に手元にあると助かるもの
- ・体温計
- ・新型コロナウイルス感染症およびインフルエンザ検査キット
- ・保険証
- ・マスク
- ・除菌Wet ティッシュ
- ・市販の風邪薬
- ・水
- ・スポーツドリンク
- ・レトルトおかゆ
- ・栄養ドリンク など
また、いざという時のために、当日配達してくれるネットスーパーやドラッグストアの宅配サービスなどもチェックしておくと、つらくて買い物に行けない時に便利です。
市販の風邪薬の役割
夏風邪に特効薬はないため、基本的に自身の免疫力で治すしかありません。しかし、風邪薬は夏風邪に伴う発熱や鼻水、咳などのつらい症状を和らげる効果が期待できるため、セルフケアとして使用するのも良いでしょう。
風邪薬を服用することにより、体力の消耗を抑えたり、食欲不振や寝不足を軽減したりする効果が期待でき、自身の免疫がウイルスと戦って排除するのを助けます。ただし風邪薬を服用して、症状が和らいでも体はウイルスと戦っていますので、無理をせずに休養をとることが大切です。
夏場は多くの汗をかくため、塩分を含む水分をこまめに補給し、脱水症状を防ぐことが大切です。消化の良いものを食べ、安静にして過ごしましょう。
夏風邪の予防法
うがい、手洗いを習慣づける
夏風邪のウイルスは感染者の鼻水や唾液、便の中に含まれており、くしゃみや咳などを介した飛沫感染や、汚染された手指やドアノブ、共用タオルなどを介した接触感染や糞口感染によって感染が広がります。
夏風邪にかからないためには、濃厚接触を避け、手洗いやうがいなどの基本的な感染対策が重要です。ただし、夏風邪を引き起こすウイルスは、アルコール消毒は効きにくいため、石けんと流水で念入りに手を洗いましょう。
夏バテに気をつけて体調を整える
夏バテに気をつけて、体調をベストな状態に保つことも夏風邪を予防するのに大切です。暑さで体がだるくなると食欲不振になり、免疫力をキープするための栄養が不足しがちになったり、疲れによって自律神経が乱れ、病気への抵抗力が弱まったりします。
夏バテは気温が高くなる夏季に急激な環境変化に体が適応できず、さまざまな不調をきたす状態です。現代社会においては季節による寒暖差だけでなく、エアコン使用による室内と屋外の寒暖差も夏バテの原因の1つになっています。
夏バテを防ぐためには、室内と屋外の温度差をゆるやかにし、夏の暑さに体が慣れるようにしましょう。塩分の入った水分をこまめに補給し、汗を出しやすくすることも大切です。
感染しやすい場所ではマスクをつける
病院を受診する際や夏風邪に感染した人の看病をするとき、人が密集する場所へ行くときはマスクを着用することをおすすめします。マスクは咳やくしゃみ症状のある人が着用した場合に、周囲に飛沫が飛散するのを防ぐ効果があります。
ただし、顔とマスクの隙間や繊維の隙間からウイルスを含む飛沫粒子が入り込む可能性があるため、効果を100%期待できるものではありませんが、マスクを着用することで飛沫による感染リスクを下げることができます。
注意点として、夏場のマスク着用は熱中症のリスクを高める場合があるため、つけっぱなしにするのはやめましょう。周囲の状況に応じて必要なときにつける、暑さを感じたら外す、こまめに水分補給するなどして熱中症対策も心がけましょう。
風邪を引かないために効果的な栄養素をとる
風邪予防には、日頃から主菜、副菜のそろった栄養バランスの取れた食事を心がけ、免疫機能を高めることが大切です。特に、夏風邪に負けない体をつくるためには、抗酸化作用のあるビタミンC、粘膜を強化するビタミンA、体の組織をつくるたんぱく質を積極的に摂取しましょう。
ただし、顔とマスクの隙間や繊維の隙間からウイルスを含む飛沫粒子が入り込む可能性があるため、効果を100%風邪を引かないためにおすすめの栄養素や食材、風邪を引いてしまったときの食事のポイントなどについて詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてみてください。