知りたい!風邪のこと

All about colds
内田直樹(うちだなおき)先生
監修:内田直樹(うちだなおき)先生

昭和大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門 教授
昭和大学卒。2014年4月より現職
日本臨床薬理学会 指導医・専門医


風邪ってどうして引くの?

風邪の定義

風邪は、正式には「風邪症候群」と呼ばれる病気(感染症の一種)で、鼻やのど(上気道)に起きる急性の炎症です。

風邪の原因

風邪を引く原因のほとんどは「ウイルス」です。このウイルスが鼻やのどの粘膜に付着(感染)、増殖すると、それに対する体の防御反応(免疫)が生じることで、風邪に伴うさまざまな症状が発現(発症)することになります。

風邪ウイルスの侵入経路と主な感染部位、症状

風邪ウイルスの侵入経路と主な感染部位、症状

風邪にかかわる身体の仕組み

鼻、のどなどからなる呼吸器は、ウイルスなどに対する防御機能がありますが、なんらかの原因で防御機能が低下すると、ウイルスなどに感染しやすくなり、風邪を引きやすくなります。

風邪を引きやすい条件

特に空気が乾燥しやすい冬は、鼻やのどの粘膜が乾燥してウイルス等に感染、増殖しやすくなります。
また、夏場でも冷房で身体が冷えると、血液の循環が悪くなり身体の防御機能が低下して夏風邪にかかることがあります。
そのほか、疲れやストレス、栄養不足などで体力が落ちている時も、風邪を引きやすくなります。


風邪の初期症状にみられる
特徴は?

症状があらわれる仕組み

風邪の原因となるウイルスなどが感染して増殖すると、ウイルスに負けまいと身体の免疫の働きが活発になります。
その働きが組織に炎症を起こすことで、風邪の症状があらわれます。

主な初期症状

一般的には、まず鼻やのどの不快感からはじまり、鼻の粘膜で炎症が起きるとくしゃみや鼻水、鼻づまりが、のどの粘膜で炎症が起きると咳や痰、のどの痛みが出るようになります。
炎症がのどから気管支に広がると、声がかすれたりすることもあります。
症状が進むと熱っぽさやだるさといった身体全体の不調につながっていきます。

  • のどの痛みのイメージ

    のどの痛み

  • 鼻水のイメージ

    鼻水


風邪の主な症状は?

風邪の症状

大きく鼻やのどにあらわれる呼吸器症状と、全身症状にわけられます。
全身症状には、発熱(微熱が続いたりするほか、高熱になることもあります)、寒気(悪寒)、頭痛、筋肉痛、関節痛などがあります。
呼吸器症状も全身症状も、必ずしも全員が同じようにあらわれるわけではなく、個人の体力や体調などによって変わります。

  • 寒気のイメージ

    寒気

  • 発熱のイメージ

    発熱

  • 咳・たんのイメージ

    咳・たん

風邪とインフルエンザ

インフルエンザも風邪症候群のひとつと言われていますが、「風邪」と別の病気と考えていた方が良いと思います。
インフルエンザは急な高熱や関節痛、筋肉痛などの全身症状を伴い、重い病気を合併しやすい点など「風邪」とは異なる特徴があります。


風邪を引いてしまったら?

風邪のセルフケア

症状に合った風邪薬を服用し、栄養があり消化の良い食事(栄養ドリンクの活用もおすすめです)をとって、
無理をせず、ゆっくり休み、体力の消耗を少しでも防ぎましょう。
部屋をあたたかくするだけでなく、加湿器などで部屋が乾燥しないようにするのも大切です。
熱が高い時は脱水症状を起こしやすくなるので、水分補給にも気をつけましょう。

  • 栄養のある食事のイメージ

    栄養のある食事

  • 部屋の加湿のイメージ

    部屋の加湿 ※加湿器をお持ちでない方は
    濡れタオルでもOK

  • こまめな水分補給のイメージ

    こまめな水分補給

妊娠中の風邪のケア方法

妊婦が風邪を引いても赤ちゃんに直接影響することはありません。ただし、妊娠中に服用した薬が赤ちゃんに影響する可能性があるため、風邪のときも自己判断での服薬は避け、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
妊娠中は免疫力の低下により感染症にかかりやすくなっているため、咳や発熱などの症状があらわれたら早めに医師の診察を受け、妊娠中に問題となりやすいインフルエンザや他の感染症ではないか診断を受けることが大切です。医師は風邪に対して、妊婦が服用しても心配のない薬を処方してくれるでしょう。

使用できる薬が限られる妊娠中は、セルフケアが大切です。消化がよく栄養価の高い食事と水分補給、部屋の加湿といった基本的なケアのほか、下記の対処法もおすすめです。

  • いつもよりゆっくり休養と睡眠をとる
  • 部屋を暖かくし、体を温める食べ物・飲み物を摂る(ショウガ、ネギ、根菜、シナモン、葛湯、紅茶、ココアなど:体が温まると代謝と免疫力が高まる)
  • はちみつ、のど飴などで、のどの潤いを保つ
  • 熱がつらいときは保冷剤などで脇の下や首を冷やす(お腹は冷やさない)

※高熱や長引く症状は医師に相談しましょう。

妊娠中は風邪薬を服用する前に相談を

妊娠中の服薬は赤ちゃんに影響する可能性があるため、妊婦の方や妊娠の可能性がある方が風邪薬などの市販薬を服用したい場合は、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
一般的に、出産予定12週以内の妊婦は市販の風邪薬を服用することができません。また、出産後も授乳中には風邪薬を服用しないか、服用したときには授乳を避ける必要があります。
妊娠中には注意が必要な感染症も多いため、風邪症状が長引くなどの場合は早めに医師に相談することも大切です。

風邪をうつさない工夫

風邪の引き始めや治りかけをはじめ、風邪をほかの人にうつさないよう注意しましょう。
「くしゃみ」や「咳」にはウイルスが含まれているため、マスクをして、できるだけ人ごみを避ける配慮も必要です。


風邪薬は何のために飲む?

風邪薬は「症状を和らげる」もの

「風邪を治す薬はない」と聞いたことがあるかもしれません。実際、風邪の原因ウイルスを完全にやっつけてくれる薬は存在しないため、風邪の治癒は体に備わった免疫力にかかっています。
風邪薬はウイルスを抑えるために使用するものではありません。風邪薬は、体力を消耗する発熱、咳、鼻水、のどの痛みなどのつらい症状を和らげ、体の負担を軽くすることで、体がウイルスと戦って排除するのをサポートしているのです。

体の免疫力がウイルスを退治して早く風邪を治せるように、症状に合った風邪薬で体を助けることも大切です。市販の風邪薬には働きの異なる複数の成分が配合されていますので、ご自身の症状にあった風邪薬を選びましょう。

風邪薬の成分と症状を和らげる働き

横スクロールでご確認いただけます

成分 効果を発揮する風邪症状 主な働き
解熱鎮痛薬
:アセトアミノフェン
発熱
頭痛
関節痛・筋肉痛
のどの痛み
体温調節中枢に作用して熱を下げる。
痛みの伝わりを抑えて痛みを和らげる。
解熱鎮痛薬
:イブプロフェンなどの
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
熱、痛み、炎症を引き起こす
プロスタグランジンの生成を抑える。
抗ヒスタミン薬
:クロルフェニラミン
マレイン酸塩など
鼻水、くしゃみ 鼻水、くしゃみを引き起こす
ヒスタミンの作用を抑える。
抗コリン薬
:ヨウ化イソプロパミドなど
鼻水 鼻水を分泌させる
神経伝達物質の作用を抑える。
交感神経刺激薬
:プソイドエフェドリン塩酸塩など
鼻づまり 鼻粘膜の血管を収縮させ、
充血や腫れを抑えて鼻づまりを和らげる。
鎮咳薬
:ジヒドロコデインリン酸塩など
咳中枢に作用して
咳の発生を抑える。
気管支拡張薬
:dl-メチルエフェドリン
塩酸塩など
咳、たん 気管支を広げて、咳を鎮め、
たんを排出しやすくする。
去たん薬
:アンブロキソール塩酸塩、
L-カルボシステインなど
咳、たん 気管の粘液成分の分泌や修復を促して、
咳の原因となるたんを排出しやすくする。
抗炎症薬
:グリチルリチン酸など
のどの痛み、
のどの腫れ
炎症による痛みや
腫れを和らげる。
生薬
:ショウキョウ末、
ケイヒ末など
発熱、寒気 体を温め寒気を和らげる。
血流を促し、発刊作用により
熱を下げる。

正しい服用方法

市販の風邪薬は、製品に添付された説明文書をよく読み、定められた用法・用量を守って服用することが重要です。自己判断で量や回数、服用方法を変えると、副作用が起こりやすくなります。
薬を服用するタイミングは、食べ物が薬の吸収に与える影響などによって決まっています。「食前」と記載された薬の場合は食事の30分くらい前までに、「食後」の場合は食事後30分以内に、「食間」の場合は食事後2~3時間の空腹時に服用します。飲み忘れた場合は、まとめて服用することは避け、次のタイミングで1回分を服用するようにしましょう。
ジュースや牛乳、アルコールなどで服用すると、薬の吸収が低下したり副作用が強く出たりする可能性があるため、水またはぬるま湯で服用しましょう。また、服用した薬が正しく吸収されるためには、十分な量の水で服用することが重要です。薬はコップ一杯程度の水分で服用するようにしましょう。
風邪薬には眠くなる成分が含まれていることが多いため、車や機械を運転する方は注意が必要です。また、他の薬を服用している方、持病のある方、その他に心配なことがある方は、風邪薬を服用できるか必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
風邪のほとんどは1週間ほどで軽快しますが、市販の風邪薬を服用しても症状が長く続く、気になる症状があらわれたなどの場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。


風邪を予防するには?

日頃の備えで防御力+免疫力を上げる

風邪の原因となるウイルスは数百種類とも言われ、それらはさらに多くの型や株に分けられます。そのため、特定の原因ウイルスに感染して免疫ができても、次々と新しいウイルスに感染して何度も風邪を引いてしまうのです。風邪は数日ほどの軽い症状で治癒することも多いですが、風邪をこじらすと副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、肺炎などさまざまな合併症を起こしてしまうことがあるため、風邪は予防が最も大切です。
風邪の予防には、原因ウイルスが体に侵入することを防ぐ「感染防御策」とともに、体の免疫力を上げることでウイルスが侵入しても増殖を許さず感染を防いだり早く治癒したりするための「抵抗力アップ策」が有効です。

ウイルスの侵入を防ぐ「感染防御策」

  • マスク
    風邪にかかった人の咳やくしゃみの飛沫に含まれたウイルスが、鼻や口に侵入することを防ぐことができます。不織布マスクが最も高い効果があります。顔にフィットするサイズを選び、鼻の形に合わせてすき間ができないように着けることが重要です。
  • 手洗い
    ウイルスが付着した手で鼻や目を触ることによるウイルスの侵入を防ぐことができます。手についたウイルスを自宅に持ち込むことも防げます。
  • うがい
    のどの粘膜にウイルスが付着する前に洗い流すことで、感染を防ぐと考えられています。水によるうがいで十分な効果があります。

免疫力を上げる「抵抗力アップ策」

  • 十分に眠り、運動を習慣にする
    十分な睡眠や適度な運動は体の免疫力を高めてくれます。
  • バランスの良い食事を摂る
    ビタミンC、ビタミンD、亜鉛など体の調子を整えるビタミン・ミネラルの摂取で風邪にかかりにくくなることが知られており、バランスの良い食事は風邪予防にも有効です。乳酸菌などのプロバイオティクスが免疫力を高め、風邪を予防することが明らかになっていることから、腸内環境を整える食品もおすすめです。
  • ストレス解消を心がける
    精神的ストレスは、免疫力に影響を与え、感染症にかかりやすくすることが知られています。過労や過度なストレスは避け、気分のリフレッシュを心がけて日頃からストレスをためないようにしましょう。
  • 禁煙
    喫煙者は風邪のほか、さまざまな感染症にかかりやすいことが知られています。
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MAT-JP-2406341-1.0-11/2024 最終更新日:2024.11.29

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