西洋ハーブ医薬品

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ヨーロッパで、古くから流通してきたハーブを使った生薬製剤(西洋ハーブ)が、2011年に、日本で初めて「医薬品」として認可されました。西洋ハーブ医薬品とは何かを知って、セルフメディケーションに役立てましょう。
監修:日本大学薬学部セルフメディケーション学教室教授 安川 憲先生

西洋ハーブ医薬品とは?

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西洋ハーブとは、欧州医薬品庁(EMA)等により、基原植物、有効性、品質管理、製造プロセスなどが明確に規定された、一般用医薬品として汎用されている「生薬製剤」(Herbal medicinal products)のことを指しています。ハーブといえば、お茶などの飲み物や食用のものが、日本人には思い出されるかと思いますが、ヨーロッパでは、古くから医薬品として流通されてきました。特にドイツでは、西洋ハーブを使った医薬品の割合が高く、店頭で様々な薬を見ることができます。このように、ヨーロッパの多くの国で、その有用性は広く認知されています。

日本では、2007年に西洋ハーブの承認審査のルールが示されたことにより、2011年に赤ブドウ葉乾燥エキス混合物(新有効成分)配合の医薬品が初めて承認されました。

「医薬品」と「サプリメント」でどう違うの?

サプリメントは日常の食事などで不足しがちな栄養素を補充するためのもので、主に健康維持・増進を目的にしていますが、医薬品は特定の疾病に対しての効能・効果が期待されています。そのため、医薬品の場合は、成分の有効性、安全性、その薬剤の作用機序等が確認されており、使用にあたっては「用法・用量」の規定があります。また、西洋ハーブ医薬品では、基原植物と薬用部位、保存の状態、抽出方法等が医薬品個々に審査され認可を受けますが、サプリメントではその規定がありません。

「西洋ハーブ」は、「漢方薬」とどう違うの?

西洋ハーブ、漢方

「西洋ハーブ」と「漢方薬」は、どちらも「生薬製剤」です。しかし、その成り立ちや使用法、原料、製剤の製法等に違いがあります。

日本に7世紀頃に中国から伝わった医学は、その後江戸時代に日本独自に発達しました。江戸時代後期にオランダ医学を蘭方と呼んだのに対し、我が国で使われていた中国から伝えられた医学を漢方と呼ぶようになりました。漢方は、主に個人の「体質」に着目し、体全体の調子を整える医学です。また、漢方薬では一つの薬草を単独で用いることはほとんどなく、方剤(ほうざい)といって5~20種類くらいの生薬を配合したものを用いることが多いのが特徴です。また、漢方で用いる生薬には、植物由来のものだけでなく、鉱物・動物由来のものを含みます。

一方、西洋で使用されていたハーブ、いわゆる西洋ハーブは、古代ギリシャ時代から使用されてきました。16・17世紀にイギリスの植物療法家(ハーバリスト)によりハーブ療法として発展し、その後ヨーロッパを中心に広まりました。特にドイツ・フランスを中心に研究がなされ、有用性が確立された医薬品は、欧州医薬品庁(EMA)の「Well-established use」分類として認められ、数多く開発されました。また、伝統的に使用されていた西洋ハーブの医薬品のうちEU圏内において15年以上販売された実績と科学的根拠が示されたものが、「Traditional use」分類としても販売されています。

どちらも、決められた用法・用量を守る必要があります。

海外で承認されている西洋ハーブの医薬品の種類

日本では、まだなじみがない西洋ハーブの医薬品ですが、初めて承認された「赤ブドウ葉」以外に、欧州で医薬品として承認されている代表的な西洋ハーブには以下のようなものがあります。欧州でも日本でも、医薬品は、基原植物、薬用部位、抽出方法等が厳しく規定されています。

赤ブドウ葉の画像

赤ブドウ葉

薬用部位:葉
効能・効果:静脈還流障害の改善
日本では2011 年にダイレクトOTC 医薬品1)として承認取得

エキナセアの画像

エキナセア

薬用部位:開花時の地上部、根
効能・効果:免疫改善

セントジョーンズワートの画像

セントジョーンズワート

薬用部位:開花時の地上部
効能・効果:一時的なうつ状態、不安の改善

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ノコギリヤシ

薬用部位:葉
効能・効果:前立腺肥大による排尿困難改善

1) ダイレクトOTC医薬品とは、新規有効成分が、医療用医薬品としての承認を経ずにOTC医薬品として直接承認された医薬品です。

ハーブを使った薬の歴史

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西洋ハーブの歴史は、古くヒポクラテスの時代にさかのぼります。この時代からハーブが湿布や飲み薬などの薬として扱われていました。その後、ギリシャの医者・薬学者・植物学者であったディオスコリデス(40年頃~90年頃)が、全5巻の薬物誌である「マテリア・メディカ」を著し、この本は、1600年頃まで薬草に関する重要な書物として利用されてきました。1600年代には、イギリスで植物療法家(ハーバリスト)が出現し、様々な薬草書を執筆します。中でもニコラス・カルペッパー(1616~1654)が書いた薬草書は各地に広まり、ハーブ療法がヨーロッパに広まるきっかけとなりました。

ハーブの薬は、長い間ヨーロッパの様々な国で独自の発展を遂げてきましたが、利用が盛んなドイツ・フランスにおいて、最初にハーブの効能に関する研究が始まりました。さらに、1995年に設立された欧州医薬品庁(EMA)が主体となり、基準を統一化しようという動きが始まりました。現在では、この厳しい基準に合致したものだけが有効性が認められた医薬品とされています。中でも、「Well-established use」とされている西洋ハーブは、歴史的な使用年数に関わらず、科学的根拠データを基にその効能・効果等が評価された西洋ハーブとなります。

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