肩こり痛の原因、関係する筋肉や予防のポイントを解説
ひと言で「肩こり痛」といっても、生活習慣によるものから内臓疾患に至るものまで原因や種類はさまざまです。本コンテンツでは、肩こり痛の原因や関係する筋肉の種類、日常でおこなえる「肩こり」への対処などを解説します。
肩こり痛の原因と
メカニズム

主に僧帽筋や肩甲挙筋といった肩周辺の筋肉が緊張して硬くなった状態を「肩こり」といいます。姿勢不良や運動不足、眼精疲労、冷え、過労などさまざまな原因によって肩こりが起こっていて、なおかつ痛みが生じている状態が「肩こり痛」です。
その際には、首や肩の上部、肩甲骨周辺を触れると筋肉が異常に緊張していることがわかります。また、以下のような特徴がみられることもあります。
特定の部位にしこりがあるが、しこり自体には痛みがなく、周辺に痛みを感じる
特定の部位にしこりがあるが、しこり自体には痛みがなく、動かしたときだけ肩周りに痛みが生じる
頭痛やめまい、吐き気のほか、腕や手のしびれを伴うこともある
そもそも私たちの肩には腕や肩甲骨に加え、約6~7kgもある頭部がのしかかっています。つまり、肩の筋肉に負担がかかりやすい構造になっているのです。特に日本人は欧米人に比べて筋肉量が少ないため、筋肉への負担が大きくなって肩こり痛を起こしやすいといわれています。
さらに長時間同じ姿勢を続けたり、精神的ストレスを抱えるなどの条件が加わると、肩の筋肉が緊張して血液の流れが悪くなり、疲労物質がたまったり、酸素やビタミンの補給がうまくいかなくなったりします。その結果、筋肉がこわばって肩こり痛が生じるのです。
肩こり、および肩こり痛に関与する筋肉には、僧帽筋や肩甲挙筋のほかにも次のような筋肉があります。それぞれの筋肉がどのような役割があるのかを紹介します。
僧帽筋 (そうぼうきん)
僧帽筋は首から肩、肩甲骨周りにかけてつながっている、背中の上部の大きな筋肉です。首を中心にひし形のような形で広がっています。僧帽筋は首や肩、肩甲骨の動きを支えており、「肩を上下させる」「すくめる」「肩甲骨を寄せる」などの動作をする際に使われています。
肩甲挙筋 (けんこうきょきん)
肩甲挙筋は頭と肩を結び、背骨と肩の関節をつなぐ筋肉であり、背中の上部から首の左右に広がっています。肩甲挙筋は頭部の上げ下げや、肩甲骨の引き上げなどの動きを調節する役割を担っています。
頭半棘筋 (とうはんきょくきん)
頭半棘筋は、頚椎と頭蓋骨を連結する筋肉群のうち、深いところにある大きな筋塊です。主に頭をまっすぐ上に伸ばす際に作用します。
頭板状筋 (とうばんじょうきん)
頭板状筋は首の後ろ側、左右の耳ほどの位置から頸椎へつながっている筋肉です。顔を上に向ける(見上げる)際や、頭部を回して振り返る際などに使われる筋肉です。
頚板状筋 (けいばんじょうきん)
頚板状筋は頭半棘筋と僧帽筋の間にあり、頚椎までつながっている筋肉です。頭や首を後ろへ反らす際や、左右どちらかへ顔を向ける際などに使われます。
棘上筋 (きょくじょうきん)
棘上筋は肩甲骨の内側(背骨側)から肩関節へとつながっている筋肉です。肩を包む三角筋をサポートするような働きがあり、肩関節を安定させたり、腕を横に上げたりといった役割をもっています。
菱形筋(りょうけいきん)
菱形筋は、頚椎・胸椎と肩甲骨をつないでいる筋肉です。肩を後ろに反らして肩甲骨を寄せる動作をする際や、肩をすくめるように上げる際などに使われます。
日常生活が原因で起こる肩こり痛

肩こり痛を引き起こす大きな要因といわれているのが、姿勢の悪さ、運動不足、ストレス、眼精疲労といった、日常生活の習慣から生まれるものです。気づかぬうちに、血行不良や筋肉減少、自律神経のバランスの乱れをまねくようなライフスタイルを送ってしまっていることで肩こり痛が起きているのです。生活習慣を見直すことで、解消・緩和が見込めます。
「肩こり痛」は、筋肉の緊張による肩こりと器質的疾患(臓器や組織の変化や異常)による痛みを分ける必要があります。
病気が原因で起こる
「肩周辺の痛み」
病気が原因となって起こる肩周辺の痛みの場合、医療機関での診察が必要です。思い当たる場合は、速やかに医師に相談しましょう。
肩や関節の異常が原因で引き起こす「肩周辺の痛み」
肩や関節になんらかの異常があって肩周辺の痛みが生じる場合があります。例えば、五十肩(肩関節周囲炎)は肩関節の周りの組織に炎症が生じることによる病気です。通常の肩こり痛とは異なり、肩の動きに制限がかかり、肩の関節を動かすと激しい痛みが生じます。
また、腱板断裂は上腕の骨と肩甲骨とをつなぐ棘上筋などの腱が切れてしまった状態で、炎症の強いときには肩に強い痛みを感じます。
首や肩の骨が原因で引き起こす「肩周辺の痛み」
頚椎症や椎間板ヘルニアなどの首や背中の病気の症状として、肩周辺の痛みがあらわれていることがあります。頸椎症の場合、症状が進むと後頭部の痛みや手足の重圧感、脱力感、マヒなどの重い症状があらわれます。
また、椎間板ヘルニアの場合は、首を後ろに反らすと激しい痛みが生じます。ほかにも、背中や腕、指先にもしびれや重圧感といった症状があらわれます。
内臓疾患が原因で引き起こす「肩周辺にあらわれる関連痛」
内科系疾患が原因で肩周辺に痛みや違和感があらわれることがあります。これは「関連痛」と呼ばれ、内臓の異常が神経を介して肩や背中などに痛みとしてあらわれる現象です。例えば、脳動脈瘤では頭痛やめまい・吐き気などの症状が、狭心症や心筋梗塞では左胸・左肩・左腕・背部に強い痛みが放散することがあります。また、胆石症や肝疾患では右肩に痛みがあらわれることがあります。糖尿病や高血圧などの慢性疾患も、神経障害や血流障害を通じて肩周辺に違和感を生じることがあります。
日常生活から肩こりを遠ざけるために! 対処のポイント
肩こり痛は、そもそも肩こりから引き起こされる症状です。ここでは、肩こりをなるべく生じさせないために、日常生活の中でできる対処について紹介します。
仕事や作業中もこまめに体勢を変える
デスクワークや台所仕事など、集中してつい同じ姿勢が続いてしまうような場合でも、意識してこまめに体勢を変えるようにしましょう。
適度な運動・体操をする
運動不足や血行不良を避けるため、日常の中でできる範囲で適度な運動を心がけましょう。
入浴は湯船につかり、ゆったりリラックスする
お風呂は慌ただしくシャワーだけで済ますのではなく、湯船にしっかりつかることで、血行促進を促すことが期待できます。お湯につかり、時間をかけてじっくり全身を温めることで心身ともにリラックスでき、ストレス解消にもつながります。
目を酷使しない
眼精疲労は肩こりの原因の1つとなるため、「PCやスマートフォンの画面を長時間見すぎない」「仕事中でも適度に目を休ませる」といった心がけが大切です。
ストレスをためこまない
ストレスが蓄積することによって、肩の筋肉が緊張してしまうこともあります。仕事や家事が忙しい時期や、悩みがあるときも気晴らしに趣味を楽しむ時間を意識的に設けたり、気心の知れた仲間とリラックスできる時間を過ごしたりするなど、ストレス解消を図りましょう。
みんなの肩こり痛事情
みなさんは肩こりや肩こり痛にどの程度悩まされていて、どのように向き合っているのでしょうか。発症頻度や対処法について調査をおこないました。
<調査概要>
調査名:姿勢・肩こり痛に関する調査
調査委託先:株式会社ネオマーケティング
調査実施日:2024年12月23日(月)~2024年12月24日(火)
調査方法:オンライン調査
調査対象:20歳~69歳の男女500名
肩こり痛の発生頻度
まずは、肩こり痛の原因となる「肩こり」の状況についてお伺いしました。「普段、肩こりを感じますか」と聞いてみたところ、半数超(53.6%)の人が「はい」と回答しています。日本では国民病ともいわれる肩こりは、実際に悩まされている人が多いという結果がわかりました。
調査での「肩こり」の定義… 姿勢不良、運動不足、眼精疲労、冷え、過労などにより、首や肩の上部、肩甲骨周辺の筋肉が、疲労や血行不良でこり固まっている状態

次に、「肩こり痛」の調査結果です。「肩こり痛をどのくらいの頻度で感じますか」という設問に対して「毎日」と答えた人がもっとも割合が多く、全体の38.1%でした。次いで、「週に2~3日くらい(20.1%)」「週に4~6日くらい(16.4%)」という回答が続いています。
回答全体の統計として「1か月に1日程度以上、肩こり痛を感じている人」という観点でみると、実に96.3%以上もの人が該当するという結果となりました。
調査での「肩こり痛」の定義:姿勢不良、運動不足、眼精疲労、冷え、過労などにより、首や肩の上部、肩甲骨周辺の筋肉が、疲労や血行不良でこり固まり、痛みが生じている状態

肩こり痛への対処
「普段感じている肩こり痛の痛みは、日常生活に影響を及ぼしていますか」という設問では、「大きな影響を及ぼしている」と回答した人が10.9%、「少し影響を及ぼしている」との回答が39.1%となり、両者を足すと肩こり痛を感じている人のうち半数ほどが、日常生活への影響を感じているということがわかります。
「日常生活に影響はない」と回答した人の割合は、僅か7.8%にとどまりました。

「肩こり痛について日常的にどのような方法で対処していますか」という設問(複数回答可)では、「肩や首を回す(73.6%)」「自分でマッサージをする(58.1%)」「ストレッチや運動をする(34.9%)」というように、みなさんの中には自然に筋肉のこりをほぐしたり、血行不良を解消したりといった効果が期待できる対処をとっている人が多くいることがわかりました。
また鎮痛薬の使用に関しては、「湿布を貼る(28.7%)」「塗り薬を使う(19.8%)」「鎮痛薬を飲む(14%)」というように、使う薬の種類が分散していることもみてとれます。

肩こり痛を緩和するには、鎮痛成分が配合された市販薬が有効です。イブプロフェンやロキソプロフェンといった有効成分に注目して、上手に市販の鎮痛薬を活用することをおすすめします。
もし市販の鎮痛薬の服用でも改善がみられない場合や痛みが慢性化している場合、ほかの症状を併発している場合などには、医療機関を受診し、医師の診断のもと治療をおこないましょう。
監修:西田 圭一郎先生
(岡山大学学術研究院医療開発領域 運動器疼痛センター 教授)
日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、脊髄脊椎病医、認定運動器リハビリテーション医、研修指導者、日本リウマチ学会専門医・指導医、日本手外科学会認定手外科専門医・指導医、日本関節病学会認定医、日本リハビリテーション医学会 認定臨床医、厚生労働省卒後臨床研修指導医、外国人臨床修練指導医、日本運動器疼痛学会教育研修プログラム修了。
掲載している情報や、監修者の所属・肩書きは、記事作成時点のものです。

ここまでの内容は西田 圭一郎先生に監修いただきました。
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