生理痛（月経痛）の薬の成分や関連知識を解説

長年の間、毎月のことに上手く付き合っているという人や、つらい痛みに悩まされている人、そして女性をサポートしているご家族など、さまざまな人へ向けて生理痛についての基本知識から簡単に解説します。どうして生理痛が起こるかを正しく理解しましょう。

生理痛とは、生理の直前から生理中にかけて起こる、主に下腹部や腰の痛みのことを指します。これらの痛みは、生理期間における子宮の収縮によって起こります。

具体的には、子宮の中（内膜）から放出されるプロスタグランジン（生理作用に影響する物質）が、臓器の平滑筋という筋肉を収縮させているのです。

生理痛には個人差があるほか、さまざま要因によって同じ人でも程度が強まったり弱まったりするケースがみられます。

日常生活に支障をきたすほどに生理痛の度合いが強い場合、月経困難症と診断されることもあります。

女性の体の中の卵胞ホルモン（エストロゲン）と黄体ホルモン（プロゲステロン）のはたらきにより、おおむね1か月ほどの周期で子宮内膜組織が正常に排泄されるのが月経（生理）です。そのため、生理痛が一定の周期で訪れるのは、体が正常なリズムで女性ホルモンを分泌し、きちんと排卵がおこなわれていることの証明といえます。

生理痛のときは、下腹部や腰の痛みのほかに頭痛や胃痛、吐き気やめまい、便秘や下痢などを伴うこともあります。

また、精神症状として気分が苛立ったり憂鬱になったり、集中力の低下がみられたりすることもめずらしくはありません。

エスエス製薬が過去におこなったアンケート調査（^※1）では、本調査対象の女性（621名）に「生理のつらさ」について質問し、以下のような回答傾向がみられました。

以上の結果からも、生理痛の痛みやつらさには個人差が大きくあるということがわかります。

生理痛には多くの場合、市販の解熱鎮痛薬が有効です。ここでは、症状の特徴別に鎮痛薬の選び方をご紹介します。

生理時の頭痛は、生理活性物質であるプロスタグランジンの影響だけでなく、女性ホルモンが関係する場合もあることが指摘されています。このような頭痛に効果が期待できる成分として「無水カフェイン」があります。

また、生理中の頭痛にはさまざまなケースが考えられますが一般的な（軽度な）頭痛であれば、プロスタグランジンの生成を抑制する効果が期待できる「イブプロフェン」がおすすめです。

生理痛の場合、吐き気の症状も伴うことがあります。これは、生成されたプロスタグランジンの量が多く、胃腸などの消化器へ影響しているためと考えられます。このような生理痛には、イブプロフェンやロキソプロフェンで痛みを鎮める対処が、選択肢の1つとなるでしょう。ただし、これらの成分には吐き気そのものをおさえる効果はないため、ご注意ください。

普段から胃が弱く、鎮痛薬を飲むことに抵抗がある人の場合には、前述のように胃の粘膜を保護する成分が配合されているタイプの解熱鎮痛薬があります。また、アセトアミノフェンも選択肢の1つです。アセトアミノフェンは比較的胃腸障害が起きにくい性質をもっています。

高校生の場合には、基本的に大人と同じ市販薬を服用できるケースが一般的です。

小学生や中学生の場合には、7才以上から服用が認められている、アセトアミノフェンを主成分とする市販薬が主な選択肢となるでしょう。

ただしいずれの場合でも、小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもと、薬ごとの対象年齢と、用法・用量や注意点などを添付文書でしっかりと確認しておくことが大変重要です。

生理周期ごとに生理痛がつらい場合、「毎回、市販の解熱鎮痛薬を飲んでも大丈夫か」「生理痛がつらい間、ずっと薬を服用し続けた場合のリスクは」など、疑問や不安を抱く人もいるかもしれません。

結論から言えば、市販の解熱鎮痛薬は、用法・用量を守っているかぎり、痛みへの効果は確認されています。

薬にはリスクもあります。体質による相性や思わぬ副作用も考えられるため、今一度注意点を解説します。

生理痛の鎮痛薬として主な選択肢となる、プロスタグランジンの生成をおさえるための非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）について、「耐性ができて効かなくなってしまう」可能性は低いと考えられています。

生理痛がつらいとき、用法・用量や使用上の注意を守って体に合った薬を服用する場合、月ごとの生理痛のときに再び服用することは基本的に可能です。

ただし漫然とした長期連用はしないでください。市販薬を用法用量通りに服用しても、症状の改善がみられない場合には、医療機関（婦人科）を受診してください。

生理痛が市販の鎮痛薬でおさえられないほど重い場合にはさまざまな原因が考えられます。

例えば、以下のような病気の場合に生理痛が重くなることが考えられますが、いずれも医師による正確な診断が大切となるため、痛みがおさえられない場合にはただちに医療機関（婦人科）を受診しましょう。

生理痛の軽減を目指すための対処として自分でできる方法に、生活習慣の見直しがあります。生活リズムの乱れや食事が生理痛のトラブルにつながることもあるため、以下6つを参考に正しい対処法を学び、なるべく快適に過ごせるようにしましょう。

デリケートな女性の体は、普段の生活の中での気持ちのもちようにも左右されます。毎日、自分が心からリラックスできるように、アロマテラピーやストレッチなどをとりいれてみましょう。ストレッチは身体的なリラックスにも効果的です。

自分の月経周期や症状の程度、基礎体温などを記録しておき、きちんと知ったうえで日頃からそなえておく方法もあります。

定期的に訪れる自分の生理周期にあてはまるタイミングでは、仕事や家事などでの過労をなるべく避けるための工夫をしましょう。

生理痛がない時期のうちに片付けられる仕事を早めに片付けておく、生理痛の時期には思いきって休養をとり、同僚や家族に相談してサポートを求めるなどの対応も大切です。

体の不調を少しでも改善するためには、栄養と睡眠をしっかりとることが大切です。1日3食をバランスよくとり、睡眠時間も充分に確保しましょう。

体を冷やさないよう注意しておくことは、日常の生活習慣の中だけでなく、生理期間中も大切です。特に生理痛が起こっているときには、ひざ掛けや毛布、使い捨てカイロなどを活用し、下腹部や腰のまわりを温めます。また、血行をよくするために入浴もできればシャワーだけで済ますのではなく、お湯にしっかりとつかって全身を温めることが理想的です。ただし生理時に湯船につかるのは抵抗がある人もいると思いますので、可能な範囲で対処することをおすすめします。

痛みが我慢できるうちは薬に頼らない方がいいと思っていませんか？

「痛み止め（解熱鎮痛薬）」は、痛みが本格的になる前に服用することで、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの生成をおさえ、痛みを和らげやすくします。飲むのが遅れてしまうと、薬が効きにくくなってしまう場合もあります。

無理に我慢して症状を悪化させないよう、鎮痛薬の正しい飲み方を学び、生理痛と上手につき合っていきましょう。

生理痛を緩和するための解熱鎮痛薬以外の対処法として、ピルで排卵をおさえたり、漢方薬を用いたりする方法もあります。さまざまな選択肢の1つとして、それぞれ覚えておくとよいでしょう。