
ED は、中高年だけの問題ではなく、年齢を問わず誰にでも起こり得る身近な疾患です。
何の前触れもなくある日突然EDの症状が出てしまうこともあれば、徐々に勃起の硬さが弱まっていくこともあります。いずれにしても、パートナーとの性行為で思うように勃起しなくなってしまったら「いったい何が起こっているのか?」「このようなことがこれからも続くのか?」などと戸惑ってしまう人は少なくありません。
本記事では、ED の医学的定義、原因、対処法についてわかりやすく解説します。

監修:佐々木 春明(ささき はるあき)先生
昭和医科大学 客員教授
医療法人社団 三喜会 横浜新緑総合病院 泌尿器科 部長
昭和大学 医学博士取得
一般社団法人 日本性機能学会 理事長
一般社団法人 日本泌尿器科学会 認定専門医
EDとは?
EDとは「Erectile Dysfunction(エレクタイル・ディスファンクション)」の略称で、日本語では「勃起不全」または「勃起障害」と呼ばれます。
医学的には、「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義されています。
重要なのは、一度うまくいかなかっただけですぐに ED と診断されるわけではないという点です。一定期間、同様の状態が続く場合にEDと診断されます。
日本性機能学会が発表した「性機能障害に関する全国実態調査報告(2024年7月)」によるとEHS(Erection Hardness Score/勃起の硬さスケール)のグレード2以下をEDと定義した場合の日本におけるEDの有病率は30.9%とされ、約1,400万人の患者が存在すると推計されています。また、2025年にエスエス製薬が実施した調査※では、EHSのグレード3以下に該当した方をEDの可能性があると判定し、それ以外をEDの可能性がない人と判定した場合、日本男性の「約2人に1人」はEDの可能性であるという結果でした。これらの結果から、EDは特別な疾患ではなく、男性であれば誰にでも起こりうるものであることが分かります。

EHSのグレード3以下に該当した人をEDの可能性がある人と判定し、それ以外をEDの可能性がない人と判定しています。
勃起の硬さスケール(日本語版EHS)
グレード0:陰茎は大きくならない。
グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない。
グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。
グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。
グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している。
出典:日本性機能学会雑誌第24巻第1号(2009年6月)
調査概要
調査名:EDと Sexual Well-being に関する調査調査委託先:株式会社ネオマーケティング
実施日(国内):2025 年 12 月 19 日(金)~2025 年 12 月 23 日(火)
実施日(海外):2026 年 1 月 14 日(水)~2026 年 1 月 22 日(木)
調査方法:オンライン調査
調査対象:日本の 20 歳~69 歳の男女 5,000 名、アメリカ・イタリア・スウェーデン・韓国・タイの 20 歳~69 歳の男女各1,000 名
上記データ以外にも、EDに関する調査結果は以下ページにてご確認いただけます。
EDの症状
EDの主な症状は以下です。
性行為を行うのに十分な勃起ができない
十分な勃起が性行為中に維持できない
十分な勃起が性行為中に維持できない状態が何度も繰り返される
勃起が維持できない、いわゆる「中折れ」もEDの初期症状のひとつです。もし一度きりであれば一過性の可能性もありますが、繰り返す場合は注意が必要です。
EDの診断方法
医療現場で実施されているEDの診断は、以下の流れで行われます。
病歴を確認する
医療面談(問診)
・病状、体の状態、生活環境、病歴など
・質問票による評価
身体を確認する
身体診察(泌尿器、内分泌系、血管、神経系疾患に焦点)
・一般診察
・(必要があれば)生殖器の局所診察
・(必要があれば)50歳以上の方には前立腺の検査も検討
・その他、肥満度チェック(メタボリックシンドロームの有無を確認)など
臨床検査を行う
基本的な血液・尿検査
・貧血、肝機能障害や腎機能障害のスクリーニング
・内分泌検査:男性ホルモン(テストステロン)の値など
・1年以内のデータがない場合:糖質検査、脂質検査
EDセルフチェックのご紹介
EDはセルフチェックが可能です。
エスエス製薬のサイトでは、2種類のEDセルフチェックツールをご用意しています。
自身の状態を把握することが、適切な対処への一歩につながります。すぐに確認できますので、ぜひお試しください。
なお、セルフチェックはあくまで自己評価のツールです。ご自身の状態についてしっかり把握したい方は専門医に相談することをおすすめします。
EDの原因
EDには、心因性EDと器質性EDがあり、その多くは心因性と器質性の混合性です。EDのリスク因子は、加齢、生活習慣、併存する疾患など多岐にわたっています。
心因性ED
以下のようなストレスや心理的要因によって起こるEDです。
仕事のプレッシャー
パートナーとの関係不安
性行為への不安やプレッシャー
過去の失敗体験(トラウマ)
例えば、朝勃ちはあるが性行為時だけうまくいかない場合は心因性が疑われます。
「また失敗するのでは」という不安が悪循環を生むこともあります。
器質性ED
血管や神経など身体的な異常による ED です。
陰茎への血流不足が主な原因とされています。生活習慣病と密接に関係しており、ED が全身の血管トラブルのサインとなることもあります。
主な原因:
動脈硬化
糖尿病
高血圧
神経障害
脂質異常症
手術や外傷の後遺症
リスク因子
その他、リスク因子によって引き起こされるEDがあります。
特に重要なリスク因子と言われているのが、加齢です。年齢が上がるほど血管機能低下・神経機能低下・ホルモン変化が起こり、EDが引き起こされる可能性が高まります。
以下のリスク因子が混合して原因になっているケースも多いです。
加齢
社会経済的要因
喫煙・飲酒
運動不足
糖尿病
高血圧
虚血性心疾患および心不全
脂質異常症
神経疾患
肥満
うつ
テストステロン低下
ED は男性更年期の症状のひとつ
EDは男性更年期障害(加齢男性性腺機能低下症候群:LOH症候群)の症状のひとつとして現れることもあります。
男性ホルモン(テストステロン)の低下により、性欲減退や気分の落ち込みとともに勃起力の低下がみられる場合があるのです。
以前よりも疲れやすさや集中力の低下を感じる場合は、LOH症候群が関係している可能性があります。気になる症状があれば、医療機関への相談も検討してみましょう。
EDの対処法
EDは適切な対応により改善が期待できます。主な対処法は以下の通りです。
カウンセリング/生活習慣の改善指導
併発疾患(リスク因子)の治療
ED治療薬の活用
1.生活習慣の改善
EDは生活習慣と深く関わっています。以下の改善が推奨されます。
項目 | 改善ポイント |
|---|---|
食事 | 総摂取カロリーの制限、脂肪摂取量の削減 |
運動 | 有酸素運動を習慣化 |
睡眠 | 十分な睡眠時間を確保 |
喫煙 | 禁煙する、喫煙量を減らす |
飲酒 | 禁酒する、過度な飲酒を控える |
特に運動習慣は血流の改善やテストステロンの維持に有効とされています。
また、EDになりやすい疾患がある場合には、適切な治療を行うことで改善する可能性があります。気になる疾患がある場合には、医師へご相談ください。
2.ED治療薬の活用
ED治療薬は、陰茎への血流を促進することで勃起をサポートする薬です。医師の診察のもと処方される薬と、処方箋なしで買える一般用医薬品があります。
留意点としては、
性的刺激があった際に効果を発揮する
服用タイミングに注意が必要
薬によって食事や飲酒の影響度合いが異なる
持続時間は薬剤により異なる
3.心理的サポート
EDは、心理的な不安やプレッシャーが症状の悪化につながることがあります。よって、パートナーに正直な気持ちを伝え、協力して向き合うことは大切な対処法の一つです。
また、必要に応じて医師やカウンセラーに相談することで、不安の軽減や思考の整理につながります。性行為への過度な成功意識を手放し、リラックスできる環境を整えることも改善の一助けとなります。
まとめ
EDとは「Erectile Dysfunction」の略で、日本語では勃起不全・勃起障害を指します。
日本では約2 人に1 人がED の可能性があるというデータがあり、男性にとって珍しくない疾患です。
完全に勃起しない状態だけでなく、中折れや硬さ不足もEDの症状に含まれます。原因は大きく分けて心因性・器質性・リスク因子があります。EDは高齢者の疾患だと思われる方もいますが、年齢にかかわらず生じる可能性があります。
一度の性行為の失敗で深刻に悩む必要はありませんが、状態が続く場合は医療機関への相談をおすすめします。ED は、心理的サポート、生活習慣の改善、併存疾患(リスク因子)の治療や薬物療法などにより、改善が期待できます。不安を1人で抱え込まず、正しい情報をもとにパートナーと共に対処していきましょう。
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