便秘になる原因・理由は?

便秘になる原因・理由は?

監修

幸田隆彦先生

幸田隆彦(こうだ たかひこ)先生

幸田クリニック(静岡県浜松市)院長
昭和大学医学部卒。2005年12月から現職。
日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。

モットー:凡事徹底
便秘や下痢だけでなく、お腹のトラブル全般をきめ細かく診療・治療するべく日々奮闘中。

便秘の原因はひとつではなく、大概はいくつかの原因があわさって起こるといわれています。便秘になった原因や理由を考えれば、便秘を解消する適切な対処法を見いだすことにつながります。

腸内環境の悪化が便秘を招く

人の腸内には数100種、100兆個もの細菌が存在し、全身の健康のカギを握っています。腸内細菌は、身体によい働きをする善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)、悪さをする悪玉菌、優位な方に加勢する日和見菌(ひよりみきん)に分けられ、理想的なバランスは善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7です。
健やかな腸は、善玉菌が優位の状態で腸もよく働きます。ところが、偏食やストレスなどで悪玉菌が増えると、日和見菌が悪玉菌に味方して腸内細菌のバランスが崩れてしまいます。

[理想的なバランス] 善玉菌2:日和見菌7:悪玉菌:1 善玉菌 腸内環境を整える。腸を活性化する 日和見菌 強い方に加勢する 悪玉菌 環境が悪いと増殖。腸の働きを悪くする

悪玉菌が多くなると腸の動きが鈍ってしまい、便秘になりやすくなります。また、便やガスが腸内に停滞することで、さまざまな不調を引き起こす可能性も。
腸内細菌のバランスを良好に保つことは、便秘の解消にもつながります。

コラム 今、注目のシンバイオティクスって?

シンバイオティクスはプロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせることで、よりお腹によい効果が期待できると考えられています。

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生理前の便秘は、ホルモンの影響

女性が生理前に便秘になりやすいと感じるのは、月経前に分泌される黄体ホルモンが影響しています。
黄体ホルモンには、大腸のぜん動運動を抑制し、便の水分を吸収する作用があります。生理前はこの黄体ホルモンの分泌が盛んになるので、大腸の動きが悪くなり、便も硬くなって、便秘になりやすくなってしまうと考えられています。
また、黄体ホルモンは、妊娠中にも多量に分泌されます。妊婦が便秘がちなのは、黄体ホルモンの影響のほか、運動不足や大きくなった子宮に圧迫されて、腸の動きが鈍るからだといわれています。

[生理周期と女性ホルモン]の表

便意のがまんは直腸を鈍感にする

忙しい朝や学校・会社などでは便意がきても、ついがまんしてしまうことがありませんか。
便が結腸から直腸におりてくると排便反射という反応が起こり、刺激が脳に伝わって便意をもよおします。しかし便意は、がまんしたり気を紛らわせたりすれば消すこともできるほどの微妙な感覚といわれています。
せっかく便意がきても排便せずにがまんを繰り返していると、直腸の反応が鈍くなり、自然な便意が起こりにくくなってしまうことに。便意を感じないので、直腸に便が溜まっていることにも気づかず、便秘が進行してしまう可能性があります。

[便意が起こるしくみ] イメージ図

運動不足じゃ、腸も動かない!?

例えば、デスクワークなどで長時間同じ姿勢だと筋肉が緊張し、血流が滞って肩こりなどが起こります。同じように、腸も運動不足だと硬くなって動きが鈍ってしまうことに。身体を動かすことで、腸も伸縮したり揺さぶられたり刺激を受けて、便を先へと送り出すぜん動運動の活性化につながります。
また、排便でいきむときには、腹筋が大きく関わっています。運動不足で腹筋が衰えると、便を押し出す力が弱くなるので便秘の原因に。高齢者に便秘が多いのは、加齢で腸の機能が衰えるうえに、腹筋が衰えていきむ力が弱まってしまうことも原因の一つといわれています

運動不足じゃ、腸も動かない!?

ストレスは腸も緊張させる

普段はお通じがあるのに、旅行に行くと便秘になる。これはストレスによる自律神経の乱れから起こる便秘といわれています。旅先の慣れない環境に身体が緊張し、腸の働きが抑えられてしまった可能性があります。
そもそも自律神経にはアクティブモードの交感神経とリラックスモードの副交感神経があり、腸の運動に深く関わっています。腸はリラックスしているときに活発に動き、逆にアクティブになると、腸の動きは低下してしまいます。つまりストレスを溜め込まないことが、便を溜め込まないことにつながるのです。


食生活の乱れは、便に直結する

便の材料は食べたものなので、食生活の乱れは便にそのまま反映されます。たとえば、ダイエットで少ししか食べないと、しっかりした大きさの便が形成されず便意が起きにくくなります。また、外食が多いと野菜不足になり、便の形成に必要な食物繊維が足らず便秘を助長することに。
1日3食、規則正しく食べることは腸に刺激を与え、排便の習慣にもつながるので大切なことです。特に朝食は、眠っている大腸を起こして動かします。排便を促す強い収縮運動は朝が最も強いので、朝食を抜くと絶好の排便タイミングを逃すことになってしまいます。
また、朝食後は便意がなくてもトイレに行く習慣をつけると、排便リズムの回復につながります。

食生活の乱れは、便に直結する!?

水分不足はカチカチ便に

水分不足はカチカチ便に

大腸はドロドロの食べかすから水分を吸収して便をつくります。水分が十分に摂れていれば、適度に水分を含んだ腸内を移動しやすい硬さの便の形成につながります。水分で便のかさも増すので、腸壁を刺激してぜん動運動も活発に。ところが水分不足だと、不足した水分を便から吸収することになるため、便が硬くなってしまい、便が腸内をスムーズに移動しにくくなってしまうのです
たとえ1Lの水を飲んだとしても、900mLは小腸に吸収され、大腸に到達するのは100mL程度といわれています。便秘だと、ただでさえ水分が足りないのに大腸にとどまる時間も長くなるので、さらに水分を奪われ、ますます硬く出にくくなってしまうことに。とはいえ、がぶがぶ飲むと体内に吸収されず、すぐに尿となって排出されてしまうので注意しましょう。

コラム 成長の節目に注意!赤ちゃんから始まる子どもの便秘

「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2013年」によると、子どもが便秘を発症しやすい時期は、①乳児の離乳食開始時 ②幼児のトイレトレーニング時 ③学童の就学開始時とし、ピークは2〜4歳のトイレトレーニング期とされています。
生後5〜6カ月頃の離乳食期は、固形物を食べるようになって便が固まりやすく、いきむ力がまだ足りないので便秘がちに。
トイレトレーニング時は、排便時の痛みを嫌がったり、失敗によって怒られることが原因に。
オムツを早く卒業させるのは便秘につながる可能性もあります。小さな子どもにとって排便することは重労働なのです。オムツの中にするのも大変なのに、便器に向かって排便するのはもっと大変。オムツの中でも排便が上手にできたら、たくさん褒めてあげてください。そうすればきっと、「排便することは気持ちの良いこと」ということを、わかるようになるはずです。そうした上で、オムツの卒業に向けたトイレトレーニングを焦らず行っていきましょう。
就学開始時は、睡眠不足や学校での排便を嫌がってがまんすることが影響するといわれています。
便秘の悩みは、赤ちゃんのときから始まります。親が注意してあげて生活対処をしながら、症状によっては病院を受診しましょう。