歯周病って何?
歯周病とは、歯の土台になっている歯周組織※に炎症が起こり、徐々に破壊される病気の総称です。かつては歯槽膿漏とも呼ばれていました。歯周病は主に口の中のプラーク(歯垢)に含まれる細菌の感染で起こりますが、このうち、炎症が歯肉の部分だけに限られている比較的軽度のものを「歯肉炎」、炎症が歯槽骨や歯根膜にまで広がったものを「歯周炎」と呼んでいます。
※一般的に「歯ぐき」と呼ばれる歯の周囲の組織のことです。
健康な歯ぐきはピンク色でひきしまっていて、歯肉溝と呼ばれる歯と歯肉の境目にあるミゾの深さは1~2mmほどと言われています。
歯周病の直接的な原因はプラーク内の細菌です。プラークは歯の表面に付着しますが、歯肉溝にも入り込み、そこで細菌が病原性を発揮し炎症を起こします。歯肉に炎症が起きると赤く腫れ、歯肉溝は深くなり歯周ポケットが形成されます。この段階を歯肉炎といいます。この歯周ポケットにはプラークや、プラークにカルシウムが沈着してできる歯石がたまりやすいため、それらが歯周病を益々進行させてしまいます。
さらに歯周炎の段階に進行すると、歯槽骨や歯根膜が破壊され、歯周ポケットはさらに深くなります。最終的には歯周組織が歯を支えることができなくなり、歯が抜けてしまいます。
歯周病の人ってどのくらいいるの?
「平成28年歯科疾患実態調査」(厚生労働省)によると4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合は、高齢になるにつれて増加しており、加齢とともに歯周ポケットが深くなっています。また15才以上の若い世代でも30%以上の人に歯肉からの出血症状が見られます。
15才以上の人でも4mm以上の歯周ポケットのある人も少なくないので、若いからと安心するのは禁物です。日頃からケアを怠らないようにしましょう。なお70代以上では歯周ポケットや歯肉からの出血の割合が低下しているように見えますが、抜歯され対象歯のない人が多い状況ですので、実際には歯肉炎も歯周炎も悪化する事が多いです。
歯を失うだけじゃない! 歯周病リスク
最近の研究により、歯周病が生活習慣や全身の健康と関係があることが明らかになってきました。その代表的な例が、喫煙と糖尿病です。
タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素には、免疫力を低下させたり血流を悪化させる作用があります。これにより歯周病菌に対する抵抗力が落ちてしまうため、歯周病が進行しやすくなってしまいます。また、糖尿病も免疫力の低下を招くので、同様に歯周病が進行しやすくなります。さらに、歯周病菌が出す毒素が歯肉から血管内に入ると、糖尿病を悪化させる場合があることもわかってきました。すなわち、歯周病と糖尿病はお互いに悪化要因の関係になるので、併発すると同時に進行していく悪循環に陥ります。
この他、歯周病菌の毒素が動脈硬化を進行させやすくしたり、歯周病菌が気管から肺に入り肺炎を引き起こすなど、全身の健康にも様々な悪影響があることがわかってきました。歯周病は単なる口の病気だけではないのです。
こんな症状があったら歯周病かも? 歯周病セルフチェック
歯周病は虫歯と違ってあまり痛みが無いため、意識しないと気づきにくいものです。
下記は歯周病の主な自覚症状です。当てはまるものがないかチェックしてみてください。
歯周病セルフチェック
出典:朝日新聞出版「日本人はこうして歯を失っていく」日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会
歯周病を防ぐには?
プラークをためないこと、こまめにとり除くことが大切です。プラークはうがいではとれませんので、毎日欠かさずにブラッシングしましょう。
隅々のプラークまで取り除けるブラッシングは、意外に難しいものです。「自分では磨いているつもり」が「磨けていない状態」になりやすいので、下記のことに注意して丁寧に磨きましょう。上手に磨けているかどうかは、歯の表面のプラークが除去できているか、歯ぐきがひきしまっているかを指標に判定してみてください。
歯ブラシの持ち方
手のひらでにぎりしめず、指先で軽く持つようにします。
エンピツや筆を持つようなイメージです。
軽い力で小刻みに毛先を動かす
力を入れすぎると毛先が開いてしまい、プラークを落としにくくなります。
小刻みに動かすことで歯と歯の間など引っ込んだ部分に毛先が届きやすくなります。
プラークが残りやすい部分は特に入念に
歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目は、毛先が届きにくいのでプラークがたまりがち。
特に丁寧に磨くように意識してください。
フロス(歯間掃除用の糸)や歯間ブラシも活用すると良いでしょう。
いくつかの方法がありますが、ここでは代表的な磨き方を紹介します。
歯の形や歯並びには個人差があるので、ご自分に合った方法を選んでください。
毛先を歯と歯ぐきの間に45度の角度で当て、歯と歯ぐきの間に入れ込むような形で細かく歯ブラシの柄を振動させて磨きます。
上下の歯を噛み合わせて歯ブラシの毛先を直角に当て円を描くようにして上下の歯を一緒に磨きます。歯の裏側は毛先を当て小さく前後運動させて磨きます。
歯ブラシの毛先を歯の表面に垂直に当て、細かく(歯一本分程度)前後に動かして磨きます。
定期的なプロフェッショナルケアも大切
歯周ポケットの中に隠れたプラークや、沈着してしまった歯石には、歯科医師によるプロフェッショナルケアが必要です。自分自身で行う毎日のブラッシングによるホームケアと、歯科医師によるプロフェッショナルケアは、歯周病を防ぐクルマの両輪のようなもの。どちらか一方のケアだけではなく両方のケアが必要です。
毎日のブラッシングが正しくできているか確かめるためにも、定期的に歯科医を受診しプロフェッショナルケアを受けるようにしましょう。
監修/日本大学松戸歯学部教授
小方 頼昌(おがた よりまさ)先生
日本歯周病学会歯周病専門医
【所属団体】日本歯周病学会・日本歯科保存学会・日本臨床歯周病学会・日本骨代謝学会・日本歯科薬物療法学会
※掲載している情報や、監修者の所属・肩書きは、記事作成時点のものです。
【所属団体】日本歯周病学会・日本歯科保存学会・日本臨床歯周病学会・日本骨代謝学会・日本歯科薬物療法学会
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