症状・疾患を知ろう

一時的な不眠(かくれ不眠)

なかなか自覚できない一時的な不眠(かくれ不眠)です。不眠の原因や予防方法を知ることで、適切な対処を心がけましょう。

一時的な不眠の図版

一時的な不眠とは

毎日ではないけれど、なかなか眠れない。ちゃんと寝たはずなのに、疲れが残っている。そんな症状があっても、「毎日じゃないから大丈夫」「週末に寝だめするから大丈夫」...などと放置してはいませんか。

かくれ不眠とは、慢性的な不眠ではなく、専門的な治療をするほどではないけれど、睡眠に悩みや不満を抱え、日常生活に影響がある、また、そんな状態にもかかわらず、睡眠の重要性に対して認識の低い状態のことを指します。睡眠は、食事や運動と同様に、健康維持のために不可欠の要素。けっして放っておかず、自分の眠りへの意識を改めて見直すことが大切です。

かくれ不眠の位置づけ

不眠症 かくれ不眠 単なる寝不足
●不眠状態の継続性
 (週2回以上、1ヶ月継続)
 不眠状態とは...
 ・入眠障害(2時間以上)
 ・中途覚醒(2回以上)
 ・熟眠障害
 ・早朝覚醒(2時間以上)
●不眠のために苦痛を感じる
または、社会生活・職業機能が妨げられる (日本睡眠学会定義)
●軽度かつ短期の不眠状態

●日中の活動に影響(支障)が出る

●不眠には気づいて悩んでいる ないしは気づかず放置している
●特に定義はない

●深刻さはない

●不快感はある

※不眠症の疑いがある人は専門医を受診しましょう。

かくれ不眠は、なかなか自覚することができないため、単なる寝不足と見分けがつかない人も少なくありません。 【かくれ不眠チェックシート】で睡眠チェックをしてみましょう。

かくれ不眠チェックシート

  • 思ったより早く起きてしまうことがある
  • 寝る時間は、毎日ばらばらだ
  • 平日はあまり寝られないが、休日に寝だめする
  • 仕事が忙しく、つい深夜まで頑張ってしまう
  • 自分は寝なくても平気なほうだ
  • 集中力が続かず、イライラすることが多い
  • なかなか寝つけないことがよくある

上記のうち、ひとつでも当てはまるものがあれば、かくれ不眠の可能性があります。また、その症状や傾向 から、日常の生活や仕事が忙しく、睡眠が削られている「生活不規則」タイプ、眠らなくても大丈夫、寝る時間を惜しんでも頑張らなければという「自分は大丈夫」タイプ、不十分な睡眠によってイライラしたり、 無気力になったりとストレスが顕在化している「高ストレス」タイプ、眠っているはずなのに「眠りが浅い」 タイプ、軽微な症状だが睡眠について何らかの悩みがある「初期かくれ不眠」タイプ...と、概ね5つのタイプに大別されます。自分の眠りへの意識を改め、生活リズムや習慣などを見直すことに役立てましょう。

不眠がもたらすリスク

不眠によって脳が休息できないと、集中力や作業効率が低下しがちになるなど、日常生活に支障をきたします。また、睡眠不足が続くと、食欲が高まるホルモンが多く分泌され、結果的に太りやすくなるほか、高血圧や糖尿病などの発症リスクが高まること、うつ病と関係することなども知られてきました。また、睡眠時間が短くても長過ぎても寿命に影響することも示されています。さらに、量・質ともによい睡眠が取れている人は、年齢を重ねても心身が健康で、生活の質も高いということを示す研究結果もあり、睡眠と日常生活、健康との関係が明らかになってきています。今後ますます、よりよい眠りへの関心は高まりそうです。

快眠のためにできること

日々のちょっとした工夫で、快適な眠りを得られる方法があります。

快眠のためにできることの図版

食事

朝食はしっかり摂って心身を覚醒させ、夕食は寝る2時間前には済ませ、アルコールはほどほどに。夕食後は、コーヒーなどのカフェインは避け、気分の鎮静効果があるカモミールティーなどがおすすめです。

運動

屋外での軽い体操や散歩、夕方の軽い有酸素運動が最適です。 
朝:光の刺激は強力な生体リズムの調整因子。太陽を浴びることで、生体リズムは活動開始のタイミングにセットされます。夕方:夕方の軽い運動は適度な疲労感とリラックス効果が得られます。

入浴

入浴は40°C前後のぬるめのお湯に、30分くらいを目安に。ゆっくりお風呂につかることで、心身ともに眠りに向けての準備が整います。

寝室の環境

眠る前の照明を暗くする、遮光カーテンを使う、室温は26°C前後、湿度は60%前後を心がけるなど、寝室の環境を整えることも忘れずに。

それでもなかなか眠りを改善できない場合は、ドラッグストアなどで購入できる睡眠改善薬を使って、まず眠りの悪循環を断ち切るのもひとつの選択肢といえるでしょう。

出典:睡眠改善委員会 かくれ不眠ラボ

睡眠改善薬のメカニズム

医療機関で不眠症治療に用いられる、いわゆる「睡眠薬」と呼ばれているものの代表にベンゾジアゼピン系睡眠薬があります。これは、脳内の抑制性の神経伝達物質であるGABAのGABAA受容体への結合を促進し、中枢神経の活動を抑えることで興奮・不安を鎮め、睡眠を誘発するものです。

睡眠改善薬のメカニズムの図版

ドラッグストアなどで購入できる市販の「睡眠改善薬」は、風邪薬などを服用したときに眠気の副作用の原因となる抗ヒスタミン薬の作用を利用したものです。脳を興奮させる作用を持つヒスタミンは、脳内のヒスタミン受容体と結合することで脳を覚醒させますが、睡眠改善薬の主成分であるジフェンヒドラミン塩酸塩は、脳内でヒスタミンが受容体に結合するのをブロックし、自然に近い眠りに導きます。なお、睡眠改善薬は、一時的な不眠症状に使用する医薬品で、長期連用するものではありません。