症状・疾患を知ろう

アレルギー性鼻炎(花粉やハウスダストなど)

花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎。さまざまなアレルゲンを原因として発症するため、年間を通した対策が重要です。

「アレルギー性鼻炎(花粉やハウスダストなど)」の図版

アレルギー性鼻炎とは

アレルギー性鼻炎は、発作的で連発するくしゃみ、透明のさらっとした鼻水、鼻づまりの3つの症状を主とするアレルギー疾患です。その主な原因は、空気中を浮遊している花粉やハウスダストなどの原因物質「アレルゲン」を吸い込み、鼻粘膜からアレルゲンに含まれる糖タンパク等が体内に入ることで起こります。

アレルギー性鼻炎には、主に花粉などをアレルゲンとし毎年同じ季節に鼻炎症状を引き起こす「季節性アレルギー性鼻炎」と、ハウスダストなどをアレルゲンとし、季節に関係なく、年間を通じて鼻炎症状を引き起こす「通年性アレルギー性鼻炎」があります。
日本では、1960年代後半からアレルギー性鼻炎の増加がみられるようになり、その当初は通年性アレルギー性鼻炎が主流でしたが、最近では花粉症の増加が顕在化しており、特にスギ花粉症は有病率の高さと症状の強さから社会問題にもなっています。

「季節性」と「通年性」のアレルギー性鼻炎

実は花粉は一年中飛んでいる!季節性アレルギー性鼻炎の図版

実は花粉は一年中飛んでいる!季節性アレルギー性鼻炎

いわゆる「花粉症」は、毎年同じ季節に鼻炎症状が起こる、季節性アレルギー性鼻炎に分類されますが、2~4月頃に発症するスギ花粉症の印象が強いため、春以外の他の季節にも花粉が飛んでいることはあまり知られておらず、他の季節に同じ症状が起きても「カゼかな」と勘違いしてしまうことも多いようです。

 

しかしスギ以外にも、鼻炎症状を引き起こす植物は多くあり、春のヒノキ、夏のシラカンバやカモガヤ、秋のヨモギやブタクサ、冬のカナムグラなど、アレルギー性鼻炎を引き起こす花粉は、ほぼ年間を通じて日本中で舞っているのです。

室内のアレルゲンにも注意!通年性アレルギー性鼻炎

季節に関係なく、年間を通じて鼻炎症状が起こる「通年性アレルギー性鼻炎」のアレルゲンとして有名なのが、ハウスダスト(室内塵)に含まれる、ダニや昆虫の死骸やフン、ヒトやペットの毛やフケ(皮膚)、カビなどです。特に布団やカーペットはダニの温床になりやすいので、室内にハウスダストが舞い上がり吸い込まないよう、予防のためにこまめな掃除が効果的です。

さらに、大気中には自動車や工場など人間の活動により排出される微粒子物質(PM2.5など)や黄砂などの自然発生による浮遊物質が存在し、アレルギー症状を悪化させる物質、いわゆる『アジュバント物質』が付着した浮遊粒子を吸い込むと、アレルギー性鼻炎症状を悪化させる原因の一つとなりますので、「季節性」、「通年性」ともに注意が必要です。

  季節性アレルギー性鼻炎(花粉症) 通年性アレルギー性鼻炎
アレルゲン
(原因物質)
主に花粉
(スギ・ヒノキ・ヨモギ・ブタクサ等)
主にハウスダスト
(カビ・ダニ・人やペットの毛やフケ等)
好発時期
(発症しやすい時期)

あり
(春や秋など花粉の種類や地域により異なる)

なし
(季節に関係なく1年を通じて)

 

アレルギー性鼻炎の症状(風邪との違い)

風邪とアレルギー性鼻炎の症状はよく似ています。アレルギー性鼻炎は、発作的に、何度も繰り返し起こるくしゃみと、透明でさらっとした鼻水が特徴的です。風邪やちくのう症などで見られる黄色や緑色の鼻水は、アレルギー性鼻炎では見られません。チェックシートで確認してみましょう。

アレルギー性鼻炎チェックシート

チェックした数が多い方はアレルギー性鼻炎の可能性があります。

  • 透明でさらっとした鼻水が出る。
  • 1週間以上、くしゃみや鼻水が続いている。
  • 目と鼻にかゆみをともなう。
  • 1日中くしゃみが止まらないことがある。
  • 熱はあっても微熱程度で高熱ではない。

アレルギー性鼻炎のメカニズムと抗ヒスタミン薬(鼻炎薬)

アレルギー性鼻炎のメカニズムと抗ヒスタミン薬(鼻炎薬)の図版

アレルギー性鼻炎の主な原因は、抗原抗体反応によるものです。空気中を浮遊している花粉やハウスダストなどのアレルゲン(抗原)が鼻粘膜に付着すると、体内に抗体が作られ、マスト細胞という名の細胞とくっつきます。

そして、マスト細胞上の抗体にアレルゲン(抗原)が結合するとマスト細胞から、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎をを引き起こすヒスタンミンなどのアレルギー誘発物質が分泌されます。

抗ヒスタミン薬には、開発の時期の違いにより第1世代と第2世代の2つの分類があり、さまざまな成分がOTC鼻炎薬として利用されています。効果の現れ方や作用の持続時間など、それぞれの特徴を理解して、自分に合った薬を選ぶようにしましょう。

  第1世代抗ヒスタミン薬 第2世代抗ヒスタミン薬
特徴
  • ・複数の成分との配合剤に利用されている。
  • ・アレルギー性鼻炎の他、副鼻腔炎などの効能がある。
  • ・効果を実感しやすいが、作用の持続が短め。
  • ・眠気や口渇、鎮静作用への注意が必要。
  • ・頓用(症状が出たときや辛い時だけ必要に応じて服用)や、短期の使用に留める(1週間までを目安)。
  • ・抗ヒスタミン薬1成分のみのアレルギー専用鼻炎薬が主流。
  • ・抗ヒスタミン作用のほか抗アレルギー作用を有する抗ヒスタミン薬。
  • ・くしゃみ・鼻水に加え、鼻づまりにも効果がある。
  • ・効果は比較的早く現れ、作用の持続も長い。
  • ・継続服用することにより、効果が上がる。
  • ・眠気や口渇、鎮静作用が少ない。
  • ・花粉シーズンでの早めの服用や、シーズンを通した使用が可能。
代表的な部分 クロルフェニラミンマレイン酸塩など エピナスチン塩酸塩、セチリジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、ロラタジン、メキタジン、ベポタスチンベシル塩酸塩

 

 

第2世代の抗ヒスタミン薬

早めの服用が効果的

非鎮静性と呼ばれる第2世代の抗ヒスタミン薬では、早めの服用(アレルギー性鼻炎症状の出始めや花粉飛散初期からの服用)が推奨されています。症状が軽い時、あるいは何となく鼻に違和感を感じ始めた花粉飛散開始時期(花粉の飛散予測日)から早めの服用を開始すれば、症状の発現を遅らせるだけでなく、シーズン中に症状が現れても、その程度を軽くすることができます。

眠くなりにくい理由

鼻炎薬を飲んだら眠くなった、そんな経験はありませんか?第2世代の抗ヒスタミン薬の多くは、眠気や集中力の低下(鈍脳)が軽減された非鎮静性抗ヒスタミン薬と呼ばれる新しいタイプとなっています。

ヒスタミンが鼻粘膜などでヒスタミン受容体と結合すると、くしゃみや鼻水などのアレルギー性鼻炎症状を引き起こします。しかし、脳内ではヒスタミンは集中力・判断力・作業能率や覚醒の維持に関与しているため、何らかの要因によって脳内のヒスタミンのはたらきが抑えられてしまうと、眠気や集中力の低下といった症状が起きやすいとされています。

一方、第2世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬は、脳内に入りにくく、脳内でヒスタミンのはたらきを阻害する事がほとんどないため眠気や集中力の低下が起こりにくいとされています。

副作用が少ない

さらに、第2世代の抗ヒスタミン薬は全般的に、服用によって口が乾きにくいという特徴もあります。

目や皮膚の不快感

アレルギー性鼻炎では鼻の症状の他に、原因となる花粉やハウスダストが目や皮膚にもトラブルを引き起こすこともあります。

目のトラブル

花粉やハウスダストなどのアレルゲンが目の結膜に触れることで、目やに、かゆみ、充血などの不快な症状が起こることがあります。アレルゲンとの接触を避けるために、花粉などのアレルゲンの多い時間帯や場所への外出を控え、外出時には花粉防止用グッズを使用するなどの対策が重要です。もし不快な症状が現れた場合でも、かゆみに任せて目を強くこすると、角膜を傷つける可能性があるので、洗眼液で目を洗い流し、専用の点眼薬の使用や、眼科を受診するなど早めに対処することが大事です。

皮膚のトラブル

顔や首など露出した皮膚に花粉やハウスダストなどのアレルゲンが接触することが原因となり、かゆみや赤み、肌荒れが生じることがあります。特に目の周りなど皮膚が薄い箇所は敏感なので、強く掻いたりすると、肌のバリア機能を低下させたり、もともと肌の弱い方や皮膚疾患のある人は、症状悪化の原因になるため注意が必要です。できるだけ、花粉などが肌に触れないように肌当たりの良いマスクの使用やスキンケアを心がけ、早めに皮膚科を受診するなど適切に対処しましょう。